岡山ジム主催興行に向けての選手インタビュー特集です
第3試合 セントラルグループ presents 岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント 準決勝戦(Aブロック) 3分3回戦(延長1ラウンド)
加藤 有吾(カトウ・ユウゴ/RIKIX/WMC日本スーパーバンタム級王者)
元山 祐希(モトヤマ・ユウキ/武勇会/JAPAN KICKBOXING INNOVATION/ICO認定インターコンチネンタルフェザー級王者、INNOVATIONスーパーバンタム級3位)
1月17日「JAPAN KICKBOXING INNOVATION 認定 第7回岡山ジム主催興行」で「岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント」に出場する加藤有吾の特集インタビューを公開させていただきます。
ー岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント出場メンバ—ー
岩浪 悠弥(イワナミ・ユウヤ/橋本道場/JAPAN KICKBOXING INNOVATION/INNOVATIONスーパーバンタム級王者、元INNOVATIONフライ級及びバンタム級王者、元WBCムエタイ日本フライ級王者、ルンピニースタジアムジャパン認定バンタム級王者、MuayThaiOpenバンタム級王者)
元山 祐希(モトヤマ・ユウキ/武勇会/JAPAN KICKBOXING INNOVATION/ICO認定インターコンチネンタルフェザー級王者、INNOVATIONスーパーバンタム級3位)
壱・センチャイジム(イッセイ・センチャイジム/センチャイムエタイジム/元ルンピニースタジアムジャパン認定バンタム級王者)
加藤 有吾 (カトウ・ユウゴ/RIKIX/WMC日本スーパーバンタム級王者)
※トーナメント準決勝戦の組合せは、前日計量終了後、出場者全員がカードを引き、1枚の当たりを引いた選手が対戦相手を指名する(4名トーナメントなので、それにより自動的に全試合決定)システムを採択しました。
元山祐希インタビュー
取材・文:JAPAN KICKBOXING INNOVATION広報部
——今回の55kgトーナメント、元山選手以外は、バンタム級(53.52kg)からスーパーバンタム級(55.34kg)で試合をしている中、フェザー級(57.15kg)からスーパーフェザー級(58.97kg)をホームとしてきたわけで、減量やコンディショニングにどうしても注目が集まります。
普段、ほとんど減量らしい減量してませんからねー(笑)。
——えっ? トーナメント出場の他3選手は「60kg近い階級から落としてくる元山選手のフィジカル」を警戒されていますよ。
通常体重が61kgとかですからねー。背丈だって164cmで高くもないし、むしろ55kgあたりを適正階級とするが普通でしょう。
——それは驚きました。何故あえて減量により少しでも優位な階級で戦おうとしなかったのでしょう?
減量キライですもん(笑)。
——直球シンプルな理由です。
僕は生まれて30年、ずっとこの調子できたので、今更“しんどいことが嫌い”主義を変えれません(笑)。
——そんな元山選手がそれでもこのトーナメント出場を決めた理由は?
自分がどこまで強くなれるのか? それを知りたくてここまでやってきました。葵拳士郎選手のタイトルに挑戦した時(2018年7月1日/INNOVATIONスーパーフェザー級タイトルマッチ/5ラウンド判定負け)なんかは「出し切った!」って充実感が気持ち良かったけど、その一方で「もっとアレができていれば」といった物足りなさもあって、それがある限り歳がいくつになろうと強くなれるから、その限界まで自分を引っ張り上げたい。それには強い相手と厳しい舞台が必要で、このトーナメントほどの高い山が目の前に現れたら「登らなきゃ損じゃないか」って思うんです。
——格闘家、アスリートと言うより求道者の面持ちです。
だけど、その正体はものすごいダメ人間なんですよ(笑)。
——それを探る為にも来歴を教えてください。
三兄弟の長男に生まれて、親父は自営業でと鳶職人です。小さな頃は、友達と外で遊ぶのが好きでしたけど、しんどいことがイヤで、運動なんか大嫌いでした。
——それでも部活などは?
中学でサッカー部に入部しまして。
——体育会デビュー?
すぐ辞めました(笑)。
——あら。
先輩後輩の挨拶とか上下関係の強要とかやってられなくて(笑)。
——すると仲間とつるんでバイクで走りだすなどの方向には?
ワルいわけでもなかったんですよ。フツーに仲間と遊ぶ毎日。
——将来の夢は?
なし! そんな中2時代がずーっと続けばいいのにって思っていました(笑)。
——前進止まず不撓不屈を感じさせる元山選手のファイトスタイルからは連想しづらい少年時代です。
それじゃあマズいと思われちゃったんでしょうね。中3の11月、親父に武勇会今治支部に連れていかれたんです。当時、日本ランカーだった河野雄大さん(後のMA日本ライト級王者)が知り合いだったようで。
——そこから一転してキックボクサー元山選手が誕生するわけですね?
いえ、イヤイヤやらされたんで、適当にやりよって、すぐにやめました(笑)。
——それにしてもそれが近く武勇会本格入門のきっかけとなるわけですね?
いやー、そこまであと7年以上かかります(笑)。
——その間は何を?
高1の夏にバイクで事故って右足が削れるほどの大怪我を負ったんです。半年は歩けないわ、親父に借金して買った新車がオシャカだわで散々でした。そこからもう乗ることのできないバイクローンの為にバイトの毎日。なんとか完済した高3の秋、親父に迫られたんです。「高卒で働くか? 大学に進学にして遊ぶか?」って。そりゃあ人生夏休みが4年延長するようなキャンパスライフを選ぶじゃないですか(笑)。
——大学はどちらに?
大分県にある日本文理大学です。
遊んでばかりいたようで受験勉強に抜かりはなかった?
——そんなわけないじゃないですか(笑)。「普通にテスト受けて入るなんて無理ぞ」って、ラグビーをやる名目で指定校推薦をいただいて。
——部活などされていなかったのでは?
まったくしてません!
——よりによって名うてのハードスポーツ、ラグビー部にどうやったら無経験者が推薦されるのか不思議ですが、そこで元山選手の強靭なフィジカルが基礎作られた?
いや、ラグビーなんて無理でした!(笑) 今でもラグビー部の仲間で友人はいますし、試合の応援に来てくれますが、社会人選手権で全国大会出たり、ジャパンラグビートップリーグの東芝ブレイブルーパスに入団したりしてる凄いヤツらです。まー、半年は頑張ってみたんですけど、身体が違いました(笑)。
——スポーツ推薦なのに退部してしまうと大学中退しなくてはならないのでは?
それがなんとかなったんです(笑)。
——その後の大学生活は?
だらだーらのダメ人間ライフを満喫です。なんの目標もなく何も生み出さない(笑)。
——そんな元山選手が、その後、ジムに入会するのは?
大学卒業後、身体もだらけ切っていたのでダイエットしようと地元の武勇会西城支部を尋ねました。すると、河野雄大さんが支部長になられていて。
——今度は、すぐに飽きたり放り出したりしなかった?
一生分遊んだんで、もうキッチリしようと気持ちを入れ替えて。すると、心を鍛える意味でも一度は試合をしてみたくなって。それでアマの試合をしたらキャリア10戦くらいの相手だったとはいえドローだったんです。その不完全燃焼が許せなくて勝ちきるか、負けきるかまでしっかりやろうと。
——極端な反転です。
そうしたら次の試合に勝って、また勝ってと続いて、2014年、グローブ空手の大会で大倉渉選手ってRISEで小宮山夕介選手とやったり、地元(武勇会主催INNOVATION認定興行)で先輩の櫻木崇浩(元INNOVATIONフェザー級王者)さんと試合した相手にトーナメントの決勝戦で負けて物凄く悔しくて。
——グローブ空手のトーナメントにバリバリの現役プロが?
プロ・アマ制限がなかったので、出場者の半分くらいプロキックボクサーだったりしていました。
——なら、まだアマの元山選手が決勝進出しただけでも相当の成果なのでは?
そこで悔しく思えた自分がいたから「ここで終われない」って、以前からいただいていたプロデビューのお話を受けることにしました。
——それが2014年夏の武勇会興行の勝利のプロ初試合になるわけですね。プロのリングの感想は?
人前で勝って褒められる気持ち良さ、頑張ったら称えられる快感に痺れました(笑)。
——成人過ぎの競技生活開始でプロになれる運動神経の良さがあり、練習もできるのですから中高生から何らかのスポーツをしていればとっくに知っていた快感のような気もします。
遅咲きながら“見つけた!”感がハンパなかったです(笑)。
——そこからは電車道でチャンピオンなりメジャーなリングへの渇望が芽生えた?
いえー、プロキックボクサーとしての具体的な目標っていうのはないです。
——INNOVATION王座に何度も爪までかけながら?
そういった懸かものがある試合なら相手のレベルも上がれば、リングの熱も上がるから、そこで「自分がどこまで強くなれるか?」と確かめたいだけなんです。
——それが冒頭の今回のトーナメントへの参戦理由へとつながるわけですね。その志はともかく、昨年10月23日、地元、愛媛県西条市で行われたドージョーチャクリキ興行のメインでBRO.RYOに判定勝利して ICO認定インターコンチネンタルフェザー級王者となりました。
あれは全然勝ったと思ってないです。応援に来てくれた皆が喜んでくれるのは嬉しいけど。だからマイクで「地元だから勝てただけです」って言わせていただいたし、機会があれば彼とはもう一度やってもいいと思っています。
——こうしてお話を聞くうちに、ダメ人間時代の長さで心配になりながらも独自の哲学と男気を持つ元山選手の魅力がムクムクと起き上がってきました。そんな元山選手が挑むZAIMAXトーナメント、出場メンバー3名の寸評をお聞かせください。
まず、岩浪選手が強いですよね。彼の試合はずっと見ていました。何でもできる優勝候補筆頭だと思います。壱(イッセイ)選手は、僕の勝手なイメージですが、ムエタイタイプよりボクサーだと捉えています。パンチがそういう質ですよね。加藤選手、一番怖いです。身体もパンチも頑丈で、とにかく“硬い”って感じがします。一発ですべてをひっくり返す強打もあるし。
——そして、トーナメントの組合せが、前日計量終了後、出場者全員がカードを引き、1枚の当たりを引いた選手が対戦相手を指名する(4名トーナメントなので、それにより自動的に全試合決定)システムを採択しています。当たって指名権を得たら、誰と初戦を戦いますか?
加藤選手です!
——即答ですが、今さっき「一番怖い」と言われていたのでは?
だからですよ。
——なんて男らしい選択なのでしょう。
それは優勝する為の戦略でもあるんですよ。岩浪選手と初戦で当たったら、序盤でKOしない限り勝っても疲弊してボロボロになって決勝戦に上がらなくちゃなりません。加藤選手となら、勝つ時にスコンと倒せるイメージなのでダメージも少なければ波に乗ってファイナルに臨めるなって。その選択ができる確率は4分の1。まあ、そんなに上手くいくわけないのが真剣勝負の醍醐味なので、相手が誰であろうと全力を尽くすのみです。
——ここで優勝すれば、更にプロとしての展望が拓けますが、何か希望は?
舞台が大きいにこしたことはありません。岡山興行なんて毎年豪華で凄い舞台。そんなリングにメイン企画で呼んでいただいて光栄です。けど、それよりも強い奴とやりたい。自分がどこまで通じるのか確かめたいです。その為ならルールにもこだわりはありません。和製ムエタイの頂点、梅野源治選手だって(肘打ちなし、首相撲制限ありの)RISEやK-1をやったじゃないですか。まったくやったことがないMMAは流石に今から練習しませんけど、シュートボクシングまでならOKです。負けるのは嫌。けど、勝ち負けは自分の心の中にあります。そんな自己満足が満たされる勝ち方にこだわって、どこでだって力を出し切りたいです。
——好漢ここにありといった爽やかさです。
ギリギリの勝負が大好きです。そこで全力を振り絞るのが一番気持ちいい。それがあるから大嫌いな減量だって我慢するし、あんなメンバーの中に飛び込むの怖ろしいったらありゃしないけど、この感じ、ワクワク、たまりません!