岡山ジム主催興行に向けての選手インタビュー特集です
第3試合 セントラルグループ presents 岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント 準決勝戦(Aブロック) 3分3回戦(延長1ラウンド)
加藤 有吾(カトウ・ユウゴ/RIKIX/WMC日本スーパーバンタム級王者)
元山 祐希(モトヤマ・ユウキ/武勇会/JAPAN KICKBOXING INNOVATION/ICO認定インターコンチネンタルフェザー級王者、INNOVATIONスーパーバンタム級3位)
1月17日「JAPAN KICKBOXING INNOVATION 認定 第7回岡山ジム主催興行」で「岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント」に出場する加藤有吾の特集インタビューを公開させていただきます。
ー岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント出場メンバ—ー
岩浪 悠弥(イワナミ・ユウヤ/橋本道場/JAPAN KICKBOXING INNOVATION/INNOVATIONスーパーバンタム級王者、元INNOVATIONフライ級及びバンタム級王者、元WBCムエタイ日本フライ級王者、ルンピニースタジアムジャパン認定バンタム級王者、MuayThaiOpenバンタム級王者)
元山 祐希(モトヤマ・ユウキ/武勇会/JAPAN KICKBOXING INNOVATION/ICO認定インターコンチネンタルフェザー級王者、INNOVATIONスーパーバンタム級3位)
壱・センチャイジム(イッセイ・センチャイジム/センチャイムエタイジム/元ルンピニースタジアムジャパン認定バンタム級王者)
加藤 有吾 (カトウ・ユウゴ/RIKIX/WMC日本スーパーバンタム級王者)
※トーナメント準決勝戦の組合せは、前日計量終了後、出場者全員がカードを引き、1枚の当たりを引いた選手が対戦相手を指名する(4名トーナメントなので、それにより自動的に全試合決定)システムを採択しました。
加藤有吾インタビュー
取材・文:JAPAN KICKBOXING INNOVATION広報部
——昨年10月29日、NO KICK NO LIFE、岡山ジム名うてのハードヒッター、MASAKINGを左フック一撃で昏倒させた1ラウンド88秒のKO勝利、見事という他ありませんでした。
あ、はい、ありがとうございます。
——あれだけの鮮やかなKOと朴訥とした現在の落ち着きのギャップが激しいです。
え、あ、緊張しているので……(汗)。
——あのリング上では、派手なKOに負けず劣らずピースサインに刈り込んだ後頭部が目立ちました。あれは勝利のVサイン?
あれはですね、自分、ファッションが好きなんですけど、友達が「paynestar(ペインスター/https://paynestar.com)ってブランドを教えてくれて、そこで去年発表されたベストのデザインがカッコ良くって入れてみました。
——そのベストを愛用されている?
それが販売されていなくって、あの髪型で目立てばなんか繋がらないかなーって下心もありました(照笑)。
——なんとも可愛い下心です。
それがインスタで髪型をアップしたら、ブランドオフィシャルから「いいね!」と「So fine」ってコメントをいただきまして、すっごい嬉しくて。
——今時のお洒落好きでありながらピュアな加藤選手のキャラクターが伺えます。ラジャダムナンスタジアム王者となった伝説のキックボクサー、石井宏樹の愛弟子で、NO KICK NO LIFEのプロモーターでもあるRIKIXの小野寺力会長が伝承する目黒スタイル(※1)を受け継ぐ孫世代の加藤選手。現在、7連勝中と絶好調ですが、ここまでに至る来歴をお聞かせください。
兄弟三人で自分は真ん中です。小学生時代は1年生から6年生まで野球をやっていました。割と活発な方だったと思います。
——とても誠実な受け答えのご印象からすると真面目な学生時代?
katoiuyuugo-1小学生まではヤンチャだったかもしれません。その後も真面目ではなかったかも。授業は全然聞いていないし、あの頃は皆がそんなでしたから学級崩壊している感じでした。
——そんな中、加藤少年が関心を持たれていたのは?
プロレスです。
——現在、21歳の加藤選手の年代からするとオカダ・カズチカなどが華やかな新日本プロレスとか?
いえ、三沢光晴とか昔のです。
——年代がまったく違うのでは?
YouTubeでずっと見まくっていました。BEST OF THE SUPER Jr(90年代に盛り上がった新日本プロレスのトーナメント企画)が特に好きで。
——当時はK-1なども盛り上がっていたのでは?
あ、はい、魔裟斗選手やPRIDEとかも見ていました。けど、なりたかったのはプロレスラーで。
——その為に何か活動を?
アマレス部が学校になかったし、まわりにその環境もなかったので、うちの近くにあった大岡山のRIKIXに中2の2月、入門しました。
——プロレスラーの第一歩としてまずはキックボクシングを?
単なる憧れだったとは思いますが、最初、ジムの階段を下る(言中のジムは地下一階)のが恐ろしくて緊張して。
——目黒ジムの伝統を引き継ぎながらも爽やかなフィットネスも盛んで瀟洒なイメージのRIKIXですがそれでも?
近所の緑道をよく先輩方が「NO KICK NO LIFE」ってプリントされたTシャツを着て走っていて凄い威圧感だったんです。
——RIKIXの選手は、とても爽やかな方が多い気がしますが?
今思えば、田中秀弥さんや前田将貴さん(写真あり)で、後にとても可愛がっていただいたんですけど、当時は恐かったです。
——そんなおっかなびっくりのキックボクシングキャリアのスタートですが練習は?
最初から楽しくてしょうがなかったです。自分が入った時、石井さんがゲーオ選手と試合をする(2014年2月11日/2ラウンドKOでゲーオ勝利)1ヵ月前で、その試合が初の生観戦でしたし、その凄さにやられてキックの虜になりました。
——ということはプロ志望に?
はい、ハッキリと会長に伝えました。
——そんな加藤選手のアマ初試合は?
高1の4月だったか5月だったか、鴇さん(目黒ジムOB、鴇稔之Kick Box会長)が主催された大会で、デカくてゴツい相手でビビってしまって……。
——結果は?
ハイキックが決まって倒せたんです。嬉しかったですけど、とにかく緊張したことが記憶に残っています。
——口調から察するに今も緊張されている感がありますし、相当ナーバスなタイプ?
これでもかなりましになりました。昔は終始カチッコチで。最近、その緊張を良い方向に流せるようになって、試合では冷静さと必要な緊張を共存させることができている気がします。
——そこからプロデビュー戦は?
2016年9月25日のディファ有明、M-1です(MASA BRAVERY戦/判定勝ち)。
——M-1(※2)ということは、デビュー戦から肘打ちあり、首相撲無制限?
はい、一度だけRISEルールだったことはありますが、基本的にそれ以外のルールをやったことがありません。
——それは、小野寺会長の育成方針というかポリシーに思えます。現在、肘打ちなし、首相撲禁止または制限ありのK-1ルール系の打撃格闘技が台頭していますが、RISEなどに興味は?
とっても活気があって魅力的ですが、自分が出るかというとウーンです。
——それは肘ありへのこだわり?
それがなければ自分的にキックボクシングではないと思っています。だから、自分が活躍することでそれをメジャーに引っ張れれば。
——緊張と恐怖の感想が多い中、突然の大風呂敷に驚きました。
会長についていけば必ずできると信じています。
——話は戻って、これまでに印象的な試合は?
MAIKI FLYSKY GYM選手に挑戦したタイトルマッチ(WMC日本スーパーバンタム級タイトルマッチ、2019年12月8日、判定勝ち)です。
——やはりチャンピオンベルトの獲得はキーポイントとなりますか?
それ以上にMAIKI選手は、アマ時代に自分よりも遥か上のレベルにいた選手で、まったく敵わなかったのがプロで2戦2勝できたことは成長を実感できて嬉しかったです。
——そうやって着々と積み上げた17戦、現在7連勝、そして、ZAIMAXトーナメントという大チャンスです。
岩浪選手みたいな強い選手が参戦して、本当に大きなチャンス。それを前から「肘ありの豪華なイベントだな」って憧れていた岡山興行でいただけて感謝しています。自分はダークホースだとは思いますが、必ず優勝してみせます。
——ご自身を大穴扱いされておられますが、興行パンフレットに掲載される優勝レース予想では、岩浪選手に続いて2番人気です。
凄い強い3選手なのでとてもそんな気になれません。
——その3名の寸評をお願いします。
岩浪選手は、テクニックが巧くてやりづらそう。元山選手は、VTRで見る分には噛み合いそうな気がします。ガッツがあって気持ちが強そう。壱(イッセイ)選手は、サウスポーのムエタイスタイルだけどボクシングもできますよね。とにかく、皆、強いです。
——そして、トーナメントの組合せが、前日計量終了後、出場者全員がカードを引き、1枚の当たりを引いた選手が対戦相手を指名する(4名トーナメントなので、それにより自動的に全試合決定)システムを採択しています。加藤選手が指名権を得たら、誰と初戦を戦いますか?
選択権いりません。
——優勝する為の戦略としては重要な一手だと思いますが。
そこは会長にお任せします。全員の研究をしていますから、誰に当たろうとも勝つだけです。
——閑話休題ですが、アパレル好きで今風の若者的な感じもしながら、発言やキックに対する姿勢に失礼ながら古風というか昭和を感じます。
自分、昔のキックボクシングやムエタイが好きなんです。那須川天心選手とか速くて巧くて強いことは間違いありませんが、熱いのは会長や新妻さんたちの試合の方が上だと思います。
——目黒ジムの伝説的なファイター、新妻聡(※3)ですか?
はい、うちのジムにも教えに来てくれていています。新妻さんのハンマー松井戦が最高の試合だなって。
——インタビューをさせていただいている当方が直撃世代なので、こちらも嬉しくなってしまうセレクトです。
ムエタイもアヌワット(※4)が好きで、現代ムエタイでもロッタンとか古風な感じがするファイタータイプが好きです。格闘技ってスポーツとイコールじゃないと自分は考えています。アスリートとしてゲームを勝ち切る選手は、それはそれでいいですけど、自分はファイターとして相手を倒しにいくのみで。
——オールドスクールのキックボクシングファンが痺れる断言です。
もちろん、テクニックは大切でその追及は怠りません。その点で石井さんや会長は頂点だと信じています。これを言うのは、自分程度がおこがましいと恐縮なんですけど、その上で会長と石井さんと新妻さんを足して三で割ったキックボクサーが自分の理想です。
——小野寺力+石井宏樹+新妻聡……それが成るなら目黒ジムの伝統の権化です。
自分にとって最高に強くてカッコいいのは、そういうファイターが闘い抜く純キックボクシングで、それをこのトーナメントで体現して優勝します!
※1 目黒スタイル キックボクシングの歴史は、ボクシングの名門、野口ジムが分派した目黒ジムが1966年に創設され誕生するが、正統派キックボクシングの象徴として、ムエタイではなくボクシングとキックのコンビネーションを基調としたスタイルが長年にわたり確立され、それはいつしか“目黒スタイル”と呼ばれるようになった。小野寺力がその最高の使い手の一人だが、ジャブ、ローキックを中心としながら対角線に結ばれた連続技で相手を倒しきる美しくも激しい戦法は、まさに王道である。ちなみに目黒ジムは、目黒藤本ジムと名称を変更しながらキックボクサー第1号である藤本勲会長(2020年5月、78歳で逝去)が守り続けていいたが昨年1月に封鎖され国内最古54年の門を閉じた。
※2 M-1 在日ムエタイジムの最大手、ウィラサクレック・フェアテックスジムが2004年1月27日に旗揚げした本格的ムエタイ興行シリーズ。正式名称は「M-1ムエタイチャレンジ」。ゲーオ・フェアテックスやワンロップ・ウィラサクレックなど数々の名ファイターを生み出したが現在は活動休止中。
※3 新妻聡 目黒ジム所属、90年代のキックボクシングを代表するソウルファイター。ハンマー松井戦、ヘクター・ペーナ戦など名勝負多数だが、勝敗に関わらず見る者の魂を震わせる迫力が特徴。それ故、“肉体言語”と呼ばれ尊敬を集めている。
※4 アヌワット 2000年代、ムエタイを席巻した超ハードパンチャー、アヌワット・ゲーオサムリットは、技巧派とは対極の“強い”ムエタイの象徴として伝説になっている。小野寺力は、その全盛期只中、2005年10月29日の引退試合で、自らアヌワット戦を嘱望し、これを実現。結果、2ラウンドKO負けで壮絶に散るが、その興行こそが「NO KICK NO LIFE」シリーズの誕生だった。