岡山ジム主催興行に向けての選手インタビュー特集です
第9試合 有限会社トータルプランニングルミナス presents INNOVATIONバンタム級王座決定戦 3分5回戦 (延長1R)
白幡 裕星(シラハタ・ユウセイ/橋本道場/JAPAN KICKBOXING INNOVATION/INNOVATIONスーパーバンタム級4位、MuaythaiOpenスーパーフライ級王者)
平松 侑(ヒラマツ・ユウ/岡山ジム/JAPAN KICKBOXING INNOVATION/INNOVATIONフライ級8位)
2021年1月17日「JAPAN KICKBOXING INNOVATION 認定 第7回岡山ジム主催興行」でINNOVATIONスーパーウェルター級王座認定試合に出場する平松 侑の特集インタビューを公開させていただきます。
取材・文:JAPAN KICKBOXING INNOVATION広報部
——地方興行では日本で最大級、年に一度の超キックボクシング祭り、岡山ジム主催興行で、同ジム所属の若手ホープ、平松選手は、毎回出場して好成績を上げておられる印象です。
プロデビュー前のアマ時代から出場させていただき、岡山興行戦績は、7戦5勝(2KO)2敗なので良い感じです。
——その中でも印象的だったのは、その2敗のうちの1敗、2018年12月16日、第5回興行の壱・センチャイジム戦(※1)です。
あれは、試合前から皆に「危ない」と言われていました(笑)。
——当時の壱(読み仮名:イッセイ)選手は、ルンピニージャパン認定バンタム級王者になったばかりの俊英で、琉球空手の基礎がありつつ、アマチュアボクシングで高校国体選手、そこから在日ムエタイジムの名門、センチャイジムで鍛え上げられた相当の逸材。平松選手も当時16歳ながらアマキャリア豊富なアマ6冠王だとはいえ、そのかなり先を行く21歳の壱選手が、しかも階級上(当時、平松はINNOVATIOフライ級ランカー)なのですから、無謀なマッチメイクと言わざるを得ませんでした。
けど、あそこで得たものがとても大きかったので感謝しかありません。
——国内トップファイターが集結したトーナメントや複数の世界タイトルマッチの前座で、新鋭同士の壮絶な倒し合いが繰り広げられたわけですが、ご自身で試合を振り返ってみてください。
試合前から壱選手のことは知っていたので、正直、恐かったです。けど、覚悟を決めて臨んだら、先に2度倒されようとも1ラウンドで最初にダウンを奪えて、そこは自信になったし、すごい嬉しかったことをよく覚えています。
——あの左ストレートによるダウン奪取には痺れました。
けど、そこから何度ダウンを奪われたか分からないくらいにボコボコにやられちゃって。それにしても自分を信じることの大切さを実感しました。負けながらにして自信がついた試合です。
——結果、第3ラウンド、0分34秒、レフェリーストップTKO負けではありながら、第2ラウンドも壱選手の狂ったような猛攻に敢然と立ち向かい、このラウンドで2度のダウンを喫し瀕死の様子ながら反撃のパンチが壱選手の膝を落とすなどマンガや映画でもないような展開でした。
もうその辺になると自分ではよく覚えていないんです。トレーナーに教わったことを必死で繰り返していただけで。
——人気ボクシング漫画「はじめの一歩」(※2)でもあるまいし、そんなことが本当にあるのだとまざまざと見せつけられた思いです。
けど、結果惨敗ですから堂々と胸は張れませんが、今後の大きな自信になったことは確かです。
——その壱選手は、同日開催の「岡山ZAIMAX MUAYTHAI 55kg賞金トーナメント」に出場します。
ファン目線でも楽しみです(笑)。
——階級上の国内トップファイターと16歳にして計6度(ダウン数:平松5回、壱1回)を奪い合う伝説の試合をされながら、こうしてお話しすると静かな好青年でしかない平松選手のギャップが魅力的です。ここで、これまでの経歴をお聞かせください。弟の弥(ワタル)選手が今回プロデビュー戦を迎えますが、家族構成は?
父と母、弥は2つ下で二人兄弟です。
——幼少期はどんな子供だったのでしょう?
気が弱くて大人しかったです。それだからか小1で父の勧めで極真空手の倉敷道場に入門しました。
——それは嫌々?
見学にいった次の日に「やりたい」と言ったらしいです。他に習い事はしていませんでしたが、週一回の道場通いで試合もしました。でも、気持ちが弱くて勝った記憶がないくらい負けてばかりでした。
——それはどこかで反転する?
トーナメントの初戦で勝ってすごく嬉しかったことを覚えています。それに味を占めて空手で上を目指そうと思ったことも。
——そのまま小学生時代は空手を?
S__99786760同じ道場に通っていた馬木樹里先輩(愛里の兄、同日試合あり)と馬木愛里(※3)先輩に岡山ジム水島道場に通い出して、やってみようかなとキックボクシングに転向しました。
——現在、タイ人トレーナーが常駐し立派な設備整った水島道場ですが、当時の様子は?
当時からタイ人の先生がおられました。プーさん、ウットーさん、ペップさん、サーさん、ウッさんと歴代トレーナーに教わってきました。はじめはおっかなビックリでしたけど、思い切って行ってみたら楽しくて。
——キックボクシングというより本場のムエタイが岡山県倉敷市で子供から習えるとは珍しくもありますが、フルコンタクト空手から変わっていかがだったでしょう?
顔を殴るのも楽しくて自分に合っていました。
——学校や趣味など他に好きだったことは?
勉強は嫌いだったので、小3くらいから毎日練習でした。他の趣味……あ、料理をするのが好きで、父と母の誕生日に手作りケーキを作ったりしています。
——白面の美少年、侑選手がご両親に手作りケーキとは素敵です。そんな平松少年のキックボクシングはどんな運びに?
小3のキック初勝利が嬉しくって、どんどんはまっていきました。小5か6の頃、本気で「強くなりたい」って思うようになって、けど、中学に上がってバスケ部にも入ろうとしたら、父に「やるんだったらひとつのことを徹底的にやりなさい」と諭されてキックを選びました。友達と遊ぶなどはそれなりにしながら、ずっと毎日キックボクシング漬けが今も続いています。
——その努力の甲斐あって地方選手としてはかなりの結果を残されています。
中1で初タイトルを獲ってから、SHASHERS(スマッシャーズ/JAPAN KICKBOXING INNOVATIONのアマチュア部門)の中国地方王者から日本王者など6本のベルトを獲得しました。
——プロ志望は当初から?
小学生の頃は、むしろプロにはならないと思っていました。けど、アマチャンピオンになってベルトを巻くと、学校の友達とかから「けっこうスゴくない?」みたいな持ち上げられ方とかされて、そのうちその気になってきて「とりあえずプロデビューしてみようかな」って(笑)。
——そして、2018年3月25日にプロ初戦となりました。
hiramatuyuu2019-1高校1年生の終わり、大森ゴールドジムでいきなりINNOVATIONフライ級8位の朝森永選手が相手でした。僕の何倍もキャリアがあるベテランで物凄く緊張しましたが、パンチで初回からダウンを奪えて、3ラウンドKO勝ちできました。
——アマ6冠王だからこそだと思われますが、デビュー戦でランカー選手に挑戦、試合順もメインで同門の太聖選手がINNOVATIONウェルター級王者の門田哲博にTKO勝ちした金星があり、同じく岡山ジムの翔貴選手が後に岡山賞金トーナメントでダークホースからの優勝でドラマを見せつける浅川大立にTKOで敗れるセミファイナルの前、オーラスからの第3試合という破格の扱い。そして、KO勝ちですからお見事です。
本当にすごく嬉しかったです! これも「キックボクシングを第一に」と導いてくれた父と母あってのことだと感謝しています。けど、本当の勝負はここからです!
——地元でプロ初タイトルマッチ、相手は“超名門”橋本道場の新鋭、白幡裕星と完璧なシチュエーションが揃いました。
自分としては目の前の1試合に全力を上げてコツコツと積み重ねることで、岡山ジムの在間会長や田村相談役、馬木会長たちにいただいたチャンスだと思っていますが、地元の友達も皆来てくれるわけで、いつもの何倍もの力が発揮できる確信があります!
——2019年3月31日、INNOVATION、大森ゴールドジム興行で判定ドローとなった白幡選手。向こうは、その後、MuaythaiOpenスーパーフライ級王者となり、絶対の自信を持って二冠目の奪取に乗り込んでくる形です。
彼をアマ時代から見ていますが巧いですよね。ムエタイスタイル、フィームー(タイ語:万能型)の僕としては、ああもガンガン前に出てくるのは噛み合わせとしてやり難いし、正直、苦手なタイプです。
——その苦手をどうする?
大きくスタイルチェンジをする気はありません。かといって、もちろん無策ではなく、信頼するトレーナーのウッさんから教えていただいたことを十二分に発揮できるように頑張ります。今回、プロ王座戦は初めてですが、5回戦も初となりますし、インサイドワークが重要になると思うので、しっかり心身の準備を整えておきます!
——共にアマでも実績十分、2度目の対戦だけに奥深い攻防となりそうです。
前回の白幡戦とはまったくの別人と闘うつもりと自分に言い聞かせています。実績でも実力でも総合して相手が上だと認識していますし、互いに2年前よりもレベルの桁が違って上がっているので、そこでどなるか? 王座決定戦ながら挑戦者の気持ちで挑む自分が楽しみです!
——ピリピリとした強い意気込みが伝わってきます。
「これぞタイトルマッチ!」と見る者を唸らせるような試合をしてベルトを巻いてみせますのでご期待ください!
※1 壱・センチャイジム戦 2018年12月16日、岡山武道館で行われた「第5回岡山ジム主催興行」は3つのムエタイ世界タイトルマッチと大波乱の59kg賞金トーナメントが主軸の伝説的な神イベントとなったが、その第1試合、壱・センチャイジム×平松侑は、初回から互いに6度のダウンを奪い合う凄まじい激戦となり(3ラウンドTKOで壱の勝利)、これ以上ないオープニングマッチとなった。以下は、試合レポートと写真付きの公式結果。
http://okayamakickboxing.blog.jp/archives/30070123.html
※2 「はじめの一歩」 リアルな試合描写で人気の週刊少年マガジン看板連載で主人公・幕之内一歩は、強敵の攻撃で意識朦朧となりながらも老トレーナーのミットを思い出し、無意識でも身体に染み込んだ反撃で相手を倒してのけるといった熱い展開が幾度もあったが、その実写版のような試合こそが壱×平松である。
※3 馬木愛里 2014年9月28日より年1回ペースで開催されていた岡山ジム主催興行の第1回より参戦し続け、長らく岡山ジムを牽引してきたエース、愛称“ピンクダイヤモンド”は、MuayThaiOpenウェルター級王者となり、本場タイでルンピニースタジアム認定スーパーライト級7位にまで上り詰めたが、2017年秋の交通事故による大怪我により長期欠場を余儀なくされ、その後、2019年11月17日の第6回興行で約2年ぶりの復帰戦は勝利したものの、その後、リングに上がることなく現在に至っている。